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一法句 人間に成る

先日飲食店での不適切な行動をしたということで、未成年者が刑事・民事両方で訴えられるという事件が相次ぎました。ネットに投稿された動画がニュースで流れておりましたが、なんというか、まぁ私見でありますが、行いが幼いな、という印象を受けました。まるで五才児がわざと悪いことをするような、そんな行いです。すぐに思ったのは、この人達は成人が近づいているのに、なぜそんな幼稚なことをしてよろこんでいるのだろう、なぜ心が幼いまま身体が育ってしまったのだろうか、ということです。
またこのところ性的暴行事件のニュースもよく見るようになりました。捕まった犯人が、「性的衝動を抑えられなかった」などとその理由を話しているのですが、衝動を抑えられないから人を襲っていいような言い方に、非常に疑問を感じます。
日本の中で、いままで世間に気を使って生きてきた反動なのか、人間は欲望に従って行動していいのだ、と思う考え方がルーズにひろがり始めているように思います。

ちょっと話は変わりますが、この頃ケーブルテレビで獣医さんのドキュメントを観ることにハマっています。アメリカの牧畜業の盛んな地域の話で、半分は家畜や馬などの大型動物です。その獣医さんが「去勢をすると頭が戻る」ということを言っておられました。番組を見ていますと、結構頻繁に牛や馬、時には猫や犬などの去勢手術をされています。性欲は動物にとって大事なものですが、それによって物事の優先順位が狂ってしまい、攻撃的になり争いや怪我がつきないそうです。去勢をし性的ホルモンが無くなると、落ち着きを取り戻しまともな行動が出来るようになるそうです。
欲に振り回されるのは動物の本能だとして、私達人間が欲や衝動に振り回されるのは、それでいいのでしょうか。

大学の時に、ある先生が「人は動物として生まれ、人間に成っていく」と言われました。
仏教では、「欲を離れる」事を重要なことだと教えてくれます。注意しないといけないのは、離れることであって無くすことではありません。誤解をされている方が多いと思いますが、仏教は欲を無くす宗教ではありません。欲を持った人間である私が、欲に振り回されないように生きるための教えが仏教なのです。
お釈迦様が初めて教えを説き、初めての五人のお弟子がその教えを理解出来た時に、「ここに六人のアラハンが生まれた」をおっしゃったそうです。「アラハン」とは「真の人」という言葉だそうです。色々と仏教は難しい教えですが、目指すところは正しく人間とり生きるための教えなのです。

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